2012年2月15日水曜日

三端子レギュレータ

三端子レギュレータの特徴と使い方のメモ

 3端子レギュレータには、古くからあるいわゆる78〇〇、79〇〇系(今回はこちらのみ)と、ここのところ多い低飽和レギュレータ(LDO;Low Drop Output)がある。固定電圧出力の78〇〇、79〇〇系は各社からIC製品が出されている(例えば、TA7805、NJM7805、NJM7915、TA79015など)が、カタログを見ると基本的には同じような内部回路構成のようである。製品としては、出力電圧、電流能力、パッケージの違いで様々にある。
使い方の上での主なキーポイントは
  1. 入力電圧は出力電圧より2.5[V]以上高くしておくこと(3[V]以上かな)
  2. 入力端子、出力端子の近傍に高周波特性の良いコンデンサを対接地(GND)で入れること
  3. 必要に応じて放熱器(ヒートシンク)を設けること
ざっとはこんなところを理解していればよいと思う。
もう少し説明すると

1については、標準出力電圧15VのIC、例えばTA7815やNJM7815などの場合は、出力電圧は規格で±4%ぐらいはあるので


なので、入力電圧は18[V]以上の必要がある。
なぜ、2.5[V]という数字が出てくるかというと、出力OUT端子から入力IN端子の等価回路が下記の図のだからである。78〇〇系の出力はNPNトランジスタのダーリントン形式になっており、さらにその駆動にはPNPトランジスタのコレクタが接続されている。このため、INから出力OUTまでは



となり、出力Voutまでの電圧が必要になる。Vbeはそれぞれ約0.8[V]、Vsatは飽和電圧なので最低でも0.2[V]として計1.8[V]になる。R*Iであるが、データシートの等価回路からすると出力の過電流保護をこれでかけているようなので、おそらくR*I=0.8[V]ぐらいでかかるであろうから、最大出力電流時では先ほどの式の電圧合計は2.6[V]となる。
78〇〇等価回路抜粋
先ほどは、2.5[V]と云ったけど、こう考えれば3[V]以上で使うことが安全な設計ということになる。
言い訳すれば、出力トランジスタは大きいだろうからVbeは0.8[V]より幾分か小さいだろうし、飽和電圧もがんばればもう少し小さくても動くだろう、電流制限が効き始める電圧ももう少し小さいだろう。それでも低温では?とか云われると、はやり3[V]以上でしょう、となる。一方入力電圧Vinの上限は、3との兼ね合いになるので、後述。

2については、発振止めのコンデンサC2,C3についてはICの近くである必要がある。値はいくつが妥当かということについては、メーカのカタログの値が妥当というしかない。ただし、それでも条件によっては発振する可能性があるので、その場合は変えてみることになる。
さて、入力側の大容量のコンデンサC1については、あまり書かれていることがないようなので少し考えてみたところ、下記の条件で良いのかと思う。下の図は、ダイオードブリッジで整流後に接続するとした場合を想定している。
全波整流後波形(78〇〇入力側と想定)
ダイオードブリッジで全波整流すると、点線の波形になる。そのままだと、点線の谷の部分は、入力電圧条件を満たせない。そうなると出力電圧に影響するので、最低限入力電圧条件を満たすことが、C1の役目になる。コンデンサC1の最低限の値は、この図の場合でいうと、AC電源の半周期の時間で、想定されるレギュレータ出力のピーク電流から出力される電荷を求めて、全波整流の波形のピーク電圧からの満たすべきΔVをもとにすれば、必要な容量値が求まるだろう。これは最低なので、レギュレータ出力電圧に入力波形のリップルをできるだけ出さないためにも、入力電圧波形の凹凸減らすのにこしたことはない。
さて、最初の回路図に出力側に電解コンデンサの絵を描かなかったのだけれども、これは考えると難しいのでパス。入れる意味合いとしては、負荷の過渡応答にICだけでは追いつかないこともあるからであろう。ただし、あまり大きな容量値だと、起動時の突入電流で、ICの過電流保護回路が起動してしまうこともあることを、頭に入れておいた方がよいだろう。そのときは、起動時にばたつくかもしれない。

3は、詳しく書かれている方もあるようなので、簡単に省略。
ICの消費電力Pは、出力電流に比べてICそのものの消費電流(バイアス電流や無効電流など)は十分小さいので



入力電圧Vinと出力電圧Voutの差に出力電流Iを掛けたものになって、それは熱になるから、放熱しないとICが高温になって正常に動かなくなるということ。
ICにはデータシートにあるように熱暴走防止のためサーマルシャットダウンなどの過熱保護回路も入っているので、燃えることはまず無いけれとも、これが起動すると出力電圧を下げてしまうので、欲しい電圧が得られなくなる。傾向としては、同じ入力電圧同じ出力電流でも、出力電圧が低い場合は、ICの消費電力が大きくなるので注意が必要。18[V]入力で15[V]1[A]出力と、同じ入力電圧で3.3[V]1[A]出力になると出力電圧3.3[V]の方が5倍近い発熱になるので注意が必要ということ。

ああー、こんなに書くとは思わなかった。
簡単に使える3端子レギュレータであるけれども、細かく考えると素子の定数一つにしても奥が深い。しかしながら、結局のところ、趣味の工作なので、とりあえず使うもよし、理屈をつけて考えてもよし。所詮ICもカタログも完全ではないし、メーカもすべてを検証できている訳でもない。私としては、大事にならない程度ならトラブっても面白いし、こねくり回して使えれば良いと開き直って使ってみることが面白いのだと思う。

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